認知症の症状と薬

認知症の代表的な症状の1つに物忘れがあります。物忘れがあると、認知症になってしまったと不安になる人も多いようですが、物忘れは正常な脳の老化現象や医薬品、疾患などが原因で起こる場合もあり、認知症ではないこともあります。

 

・物忘れと認知症のちがい
・中核症状 ~認知症かどうかの判断~
・認知症の種類
・アルツハイマー治療薬
・脳を若く保つために・・・(非薬物療法)
・最後に・・・




認知症 ~物忘れとの違い~


単なる物忘れと認知症には、物忘れを自覚しているかどうかの違いと言われています。

例えば、家族に今朝何を食べたか聞かれたときに、加齢による正常範囲の物忘れであれば、メニューが浮かんでこなくて考え込んでしまっても、朝食を食べたことは覚えています。しかし認知症の物忘れでは、メニューではなく食べたという出来事自体忘れてしまっているようです。

このように認知症の場合は、物忘れそのものを自覚できなくなってしまいます。

 

 

中核症状 ~認知症かどうかの判断~


認知症には「アルツハイマー病」、「レビー小体病」、「脳血管性認知症」の3つに大きく分けられますが、「中核症状」はすべての認知症の方に現れるの症状です。また、人によって出たり出なかったりする周辺症状があります。脳血管性認知症の場合は、比較的早く進行し、アルツハイマー型認知症ではゆっくり進むといわれています。

「中核症状」

記銘力障害・・・新しく覚える力がなくなる。

記憶力障害・・・一度覚えたことを忘れやすくなる。

見当識障害・・・「今日は何日?」「今どこにいる?」などがわからない。

計算力障害・・・簡単な足し算もできなくなる。

 

「周辺症状」

感情障害・・・・興奮しやすく、うつにもなりやすく、話すことが少なくなる。

思考力障害・・・質問に対して、同じ答えを繰り返し、自分の考えを頑固に主張する。

異常行動・・・・同じものを何個も買ったり、あてもなく歩き回ったりする。

周辺症状は周りの人の接し方で症状が大きく異なることもあるようで、周囲からの行為、優しさなどから、認知症患者にとって「受け入れられている」という安心感が周辺症状の進行に影響を与えるようです。

 

 

認知症の種類


日本ではアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症が多く見られ、三大認知症と呼ばれている。

アルツハイマー型認知症( Alzheimer’s diseaseAD )

アルツハイマー病は、認知機能低下、人格の変化を主な症状として、認知症の60-70%を占めます。症状は徐々に進行する認知障害(記憶障害、見当識障害など)であり、生活に支障が出てきます。重症度が増すと、摂食や着替え、意思疎通などもできなくなり最終的には寝たきりになってしまいます。

 

レビー小体型認知症 ( Dementia with Lewy Bodies; DLB )

症状として、運動のスロー化、手足の震え、幻視、睡眠障害、失神、バランス失調、転倒などしやすくなります。覚醒状態は日々変化し、はっきりしているときもあれば、短期記憶が失われている日もあるようです。65歳以下が罹患することはまれと言われています。

 

脳血管性認知症( Vascular dementia )

多くは突然発症し、脳梗塞、脳出血など脳の血管に異常が起きた結果、認知症になってしまうことです。脳に何らかの障害が残った状態、後遺症として進行し、障害された部位によって症状は異なるので、麻痺や感覚障害など神経症状を含め、障害された機能と障害されていない機能が混在しています。

 

「アルツハイマー型」と「レビー小体型」の違いは?

初期症状の違い

アルツハイマー型 ・・・ 記憶障害

レビー小体型   ・・・ 幻視(記憶障害は軽い)

 

睡眠での違い

アルツハイマー型 ・・・ 昼夜逆転(深夜徘徊など)

レビー小体型   ・・・ 悪夢をよく見る

 

パーキンソン症状の違い

アルツハイマー型 ・・・ ほとんどみられない

レビー小体型   ・・・ 初期からみられる

 

ちなみに認知症がどちらの型なのかということはこだわる必要はそれほどありません。

どちらかの診断がされた後の治療方法は基本的に同じです。

 

 

アルツハイマー治療薬


アルツハイマー型認知症に処方される薬として「コリン仮説」と「グルタミン酸仮説」の2つの仮説に基づいた医薬品が使用されています。

 

コリン仮説

アルツハイマー型認知症では脳内での神経伝達物質が減少しています。この神経伝達物質の一つのアセチルコリンがあり、アルツハイマー型認知症ではアセチルコリンが著しく減少しているという仮説に基づいて医薬品が開発されました。

アセチルコリンを分解する酵素としてコリンエステラーゼがあり、コリンエステラーゼにはアセチルコリンエステラーゼとブチリルコリンエステラーゼの二つがあります。これらのコリンエステラーゼの働きを阻害して、結果、脳内のアセチルコリン量を増やすことでアルツハイマー型認知症に効果があると考えられています。

 

ドネペジル(商品名:アリセプト)

ドネペジル塩酸塩(アリセプト)は、アセチルコリンの加水分解酵素であるアセチルコリンエステラーゼを可逆的に阻害することにより、アセチルコリンの分解を抑制し、作用部位(脳内)でのアセチルコリン濃度を高め、コリン作動性神経の神経伝達を促進します。

ドネペジルは日本人が開発した、世界最初のアルツハイマー病治療薬です。

大まかなイメージで・・・

参照 エーザイ アルツハイマー型認知症 コミュニケーションファイル

 

詳しく示すと・・・

参照 エーザイ アリセプトの作用機序について(医療者向け)

 

アリセプトのジェネリック医薬品

アリセプトにはジェネリック医薬品が発売されています。各社によって、口の中で溶ける錠剤など種類は様々で、薬の定価は約半分です。安全性や品質などは保証されていますが、ドネペジル塩酸塩はもともと苦みがあるため、飲みにくい薬もあるようです。

 

リバスチグミン(商品名:イクセロンパッチ、リバスタッチ)

リバスチグミン(イクセロンパッチ、リバスタッチ)はアセチルコリン分解酵素のコリンエステラーゼであるアセチルコリンエステラーゼとブチリルコリンエステラーゼの二つを阻害して、アセチルコリンの分解を抑制し、作用部位(脳内)でのアセチルコリン濃度を高め、コリン作動性神経の神経伝達を促進します。

参照 医学書院 第2929号 図3リバスチグミンの作用機序

正常脳のコリンエステラーゼのほとんどはアセチルコリンエステラーゼでありブチリルコリンエステラーゼは約10%にすぎませんが、海馬にはブチリルコリンエステラーゼが多く存在しています。アセチルコリンエステラーゼは神経細胞に発現していますが、ブチリルコリンエステラーゼは神経細胞のほか、グリア細胞や血管内皮細胞にも発現しているのが特徴です。

認知症の進行に伴って、神経細胞の脱落が起こりアセチルコリンエステラーゼ活性は低下しますが、グリア細胞は増生し、ブチリルコリンエステラーゼ活性が上昇します。そこにリバスチグミンの効果が期待されています。

 

ガランタミン(商品名:レミニール)

ガランタミン(レミニール)はシナプス前膜と後膜のニコチン性アセチルコリン受容体のアセチルコリン結合部位とは異なる場所に結合し、その立体構造を変化させてシグナル伝達の感受性を亢進させます。さらにシナプス前膜ではアセチルコリン、ノルエピネフリン、セロトニンなどの神経伝達物質の放出を促進し、認知機能を改善させると考えられています。

参照 医学書院 第2929号 図2ガランタミンの作用機序

ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニストは、長期投与による受容体感受性低下という薬剤耐性上の問題も議論された時期があったようですが、ガランタミンの場合、受容体に直接アゴニストとして作用しないため、持続的にニコチン性アセチルコリン受容体の感受性を促進させて認知機能を維持する効果が期待されています。




グルタミン酸仮説

脳内の主たる興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体の一つでNMDA受容体があります。大脳皮質や海馬に多く存在し、気をくに関する長期増強や発達可塑性における中心的な役割を担っています。

認知症ではシナプス間隙のグルタミン酸濃度が持続的に上昇し、その結果シナプティックノイズ(シナプス後膜の電位変化)が増大し、気を苦を形成する神経伝達シグナルを隠してしまうため、記憶、学習機能が障害されると考えられています。

参照 http://kusuri-jouhou.com/medi/alzheimer/memantine.html

アミロイドβ(バイオマーカー)がNMDA受容体のグルタミン認識部位に結合して細胞内のカルシウムイオンが過剰に流入することで、神経細胞が傷害されると言われています。

 

メマンチン(商品名:メマリー)

NMDA受容体に拮抗してシナプティックノイズを抑制することに加えて、過剰なカルシウムイオンの流入を抑え、神経細胞傷害を抑制すると考えれています。他のNMDA受容体拮抗薬は生理的な神経伝達にも影響するのですが、メマンチンは生理的な神経伝達時には受容体から離れる特徴があり、神経伝達シグナルがうまく伝わることで、記憶、学習機能障害も抑制されることが期待されています。

参照 医学書院 第2929号 図3 メマンチンの作用機序

 

お薬の使い分けは?

「コリンエステラーゼ阻害薬」

(アリセプト、リバスタッチ・イクセロンパッチ、レミニール)

軽度から使え、不安・抑うつ状態に効果があります

初期に下痢・吐き気の副作用が多く見られます

 

「NMDA受容体拮抗薬」

(メマリー)

中度から使え、興奮・攻撃性に効果があります

初期にめまいの副作用が多く見られます

 

 

 

漢方薬

抑肝散

抑肝散は脳シナプスでの神経伝達物質「セロトニン」と「グルタミン酸」の働きを整えます。

セロトニン・・・減ると焦燥感や不安が強くなり、精神状態が不安定になる傾向があります。
グルタミン酸・・増えすぎると興奮状態になり、攻撃性が高くなります。

 

抑肝散は認知症治療薬ではなく、幻覚、抑うつ、不眠などの周辺症状に効果があることからアリセプトやメマリーなどの処方薬と一緒に処方されます。

他の漢方薬も症状に合わせて併用されることが多いようです。

 

抗精神病薬

周辺症状に合わせて処方されることがあります。

 

 

脳を若く保つために・・・(非薬物療法)


脳を活発に働かそう

人の話を聞く、テレビを見る、新聞や本を読むなどの外からの刺激をうけ、以前あった情報を思い出し、感じたことを伝え、他の人についてたり日記を書いたりするなどの行動をとるときに脳は活発に働くといわれています。まずは会話を楽しんでみましょう。

 

新しい経験をしよう

「年だから」とか「年甲斐もなく」という言葉はいりません。いろんなことに興味をもち、新しいことに積極的に挑戦してみましょう。ユーモアや遊び心を持ち続ける人は内面から若々しくさせてくれるものです。

 

手先を使おう

無意識ではなく、考えながら集中して手や指先を動かすことにより、触感などの間隔を通して前頭葉、頭頂葉などの脳の多くの部分を刺激します。楽器、陶芸、編み物、折り紙などの趣味を持つといいかもしれませんね。

 

人との会話を楽しもう

人と会って話したり笑ったりする日常行動は、簡単にできる脳のトレーニングです。人とのコミュニケーションでは心遣いが大事ですが、この時、脳は活性化しています。コミュニケーションで相手の心に寄り添い優しい心遣いを心がけましょう。

 

身体を動かそう

身体を動かすことで、血液が流れ脳の血流も増え新陳代謝も活発になります。前頭葉にある運動中枢、位置間隔、運動感覚などが活発になり、自然と脳の働きが活発化します。運動が苦手という方にはウォーキングなどはいかがでしょう。ゆっくり手を振ってしっかりした足取りで歩き有酸素運動をしてみてください。自分に合わせた時間で無理なく行いましょう。

 

笑いましょう

笑うと気分がスッキリするものです。笑うことでストレスをエネルギーに変えているためです。テレビや映画を見て笑い、人とコミュニケーションをして笑い、普段から明るい気持ちで過ごして笑顔ですごしましょう。

 

音楽を楽しみましょう(H29.4.19更新)

認知症に音楽体操が有効というデータを三重大学の研究グループが発表されて、注目が集まっています。

三重大学(津市)は十七日、音楽の伴奏に合わせた運動が、認知症患者の認知機能の維持・改善に有効であると発表した。御浜、紀宝の二町で実施した調査で、科学的に効果が証明されていない音楽療法に、体操運動を組み合わせた療法の有効性を世界で初めて証明した。認知症患者に対する薬を使わない療法の一つとして注目が集まる。  三重大の研究グループは、ヤマハ音楽振興会(東京)や二町と協力して「御浜・紀宝プロジェクト」を立ち上げ、音楽のリズムやテンポに合わせて体を動かす「音楽体操」を認知症の発症予防や患者の認知機能の改善に活用しようと研究している。二十六年には、認知症を発症していない高齢者の認知機能を向上させることを証明した。  認知症を発症した患者にも音楽体操が有効であるかを調べるため、二十七年秋から二十八年秋まで、身の回りの世話が必要のない軽度の患者から、日常生活で介護が必要な中等度の患者までの計八十五人を対象に研究を進めた。  患者らは、音楽体操をするグループと、ドリルやゲームなどの脳トレに取り組むグループの二つに分かれ、週に一回、四十分間、それぞれの予防法を半年間続けた。調査の実施前後で、認知機能の検査を受けた。  この調査では、平均年齢87・2歳の高齢の被験者が取り組みやすいよう、椅子に座った状態で、歌謡曲や童謡の伴奏に合わせ、足や腕を上げ下げする運動を専門のトレーナーが指導した。  検査拒否などで参加を中止した二十三人を除き、調査の結果、図形パターンを類推する検査にかかった時間が、脳トレのグループは微減だったのに対し、音楽体操を続けたグループは約三分の二に短縮。着替えや食事など日常生活の機能を点数化して評価する検査では、脳トレのグループは点数が減少したのに対し、音楽体操のグループは半年後も調査前と同じ点数を維持していた。  一方、記憶力を測る検査では、調査後の改善の幅が、脳トレに取り組んだグループが、音楽体操のグループの二倍だった。  研究グループは、この研究成果を電子版の米国医学誌で三月に発表。音楽体操は脳トレに比べて、軽度から中等度の認知症患者が日常生活を過ごすための運動や認知の機能を維持できるとしている。  記者会見した認知症医療学講座の佐藤正之准教授(53)は「音楽は一九四〇年代~五〇年代の流行歌や童謡を採用した」と説明。「どんな音楽や運動に効果があるかは研究の余地がある」と課題を示し「今後、県内で音楽体操に患者が取り組む体制を整える」とした。

引用 伊勢新聞社 平成29年4月18日付

 

最後に・・・


いくつになっても興味のあることに挑戦するということは、脳のためにもいいことですね。お薬のことや生活の中でできるアドバイスはもちろん、今、実行していること、チャレンジしていることも医療のスタッフやお友達に相談してみるとそこで会話が広がります。

あなたのチャレンジお待ちしています(^◇^)




参考文献

http://kusuri-jouhou.com

http://www.meron-net.jp

アリセプト(エーザイ)、リバスタッチ、メマリー添付文書、パンフレット

医学書院 第2929号 アルツハイマー病の克服を目指して

 

 

お薬をより使いやすくを目指して・・・

やまと Σb( `・ω・´)グッ

 

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